名古屋高等裁判所 昭和52年(ネ)256号 判決 1978年5月30日
控訴人
山口ちか
右訴訟代理人
福井正二
被控訴人
大井きよ
右訴訟代理人
影山正雄
主文
原判決中、亡大井朝治の昭和四一年二月一七日付自筆証書による遺言の無効確認請求に関する部分は、これを取消す。
被控訴人の右遺言無効確認請求の訴えを却下する。
控訴人のその余の控訴を棄却する。
訴訟費用は、第一・二審ともすべて控訴人の負担とする。
原判決の別紙第二目録を、この判決の別紙目録のとおり更正する。
事実《省略》
理由
一遺言無効確認請求の訴えについて
被控訴人が亡大井朝治の相続人の一人であることは当事者に争いがないところ、<証拠>によると、亡朝治の相続人らの間においては昭和四五年四月八日、遺産全部について分割の協議が調い、遺産のうち本件土地は被控訴人が取得することとなつて相続を原因とする所有権移転登記も既に経由され、その余の遺産は河合さよ子が三筆の土地を、大井陞が残る七筆の土地を、各別に取得することになつた事実が認められる。そうであるとすれば、本件土地については、端的に、遺言の無効を前提とする現在の権利関係確認の訴えを提起することができるし、それが当事者の紛争の解決に最も適することは明らかである。したがつて被控訴人は、基本的法律関係である遺言自体については、もはやその無効確認を求める法律上の利益を有しないと解するのを相当とする。
よつて、これと結論を異にし、遺言無効確認請求の訴えにつき被控訴人に確認の利益を認めた原判決は失当というべきである。
二抹消登記申請手続の請求について
当裁判所も被控訴人のこの請求は認容すべきものと判断する。その理由は、原判決六丁表五行目から、一一丁表一〇行目までに説示されているとおりであるから、これを引用する。<中略>
よつて、被控訴人の抹消登記申請手続請求は理由があり、これと同旨の原判決は相当である。
三よつて、遺言無効確認請求については原判決を取消したうえ、被控訴人の右訴えは不適法としてこれを却下し、抹消登記申請手続請求については控訴人の控訴を棄却する<後略>。
(村上悦雄 小島裕史 春日民雄)